はじめに

認知症は、脳の器質的障害により認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指す。なかでもアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)は認知症の中で最も大きな割合を占める疾患であり、今後も患者数の増加が見込まれている1-3)。このような背景から、近年、ADに対する新規治療薬の開発が活発に進められている。 
米国食品医薬品局(Food & Drug Administration:FDA)は、2023年1月にはレカネマブ(エーザイ株式会社、バイオジェン・インク)を迅速承認、同年7月に完全承認した4)。国内では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)における審査を経てレカネマブが承認され、2023年12月に保険適用となり、最適使用推進ガイドラインも発出された5)。さらに、2024年にはドナネマブ(日本イーライリリー株式会社)の製造販売承認も了承されている6)。 

レカネマブは、ADの病態に関与すると考えられているアミロイドβ(Aβ)を標的とするヒト化モノクローナル抗体である7)。従来のAD治療薬は、症状を一時的に改善することを目的とした対症療法薬であった。一方、これらの薬剤はADの病態そのものに働きかける疾患修飾薬であり、病態の進行抑制が期待されている。 

ADの評価では、脳内Aβ蓄積を可視化できるアミロイドPETが広く用いられる。アミロイドPETでは、読影医による定性的評価(視覚評価)に加え、定量的評価も行われる。代表的な定量指標の一つがセンチロイドスケールであり、レカネマブの第Ⅲ相臨床試験(CLARITY AD)でも、アミロイドPETによる脳内アミロイド蓄積量の変化を評価する副次評価項目として使用されている8)。 

本稿では、センチロイドスケールの概要、算出に必要な撮像・解析の考え方、臨床試験における活用上の留意点について概説する。 

ルツハイマー病の診断・効果判定の課題

抗アミロイドβ抗体薬の投与対象を判断するためには、臨床診断に加えて、Aβの脳内蓄積を確認することが重要である。Aβ蓄積を確認する検査にはアミロイドPETや脳脊髄液検査があるが、非侵襲的に脳内分布を評価できる検査として、アミロイドPETが用いられることが多い。また、治療効果や病態変化を経時的に評価する場面でも、アミロイドPETは重要な役割を担っている。 

一方で、アミロイドPETでは集積が軽度な場合、読影者間で陰性・陽性の判定が一致しにくいことがある。そのため、視覚評価のばらつきを補う客観的な評価指標として、センチロイドスケールが考案された9)。 

センチロイドスケールとは

センチロイドスケールは、アミロイドPETにおけるAβ蓄積の程度を標準化して表す定量指標である。具体的には、Aβ集積をほとんど認めない若年健常者における11C-PiB PETの平均値を0、典型的なアルツハイマー病患者における11C-PiB PETの平均値を100として線形変換した指標である9)。この標準化により、11C-PiB以外のアミロイドPETトレーサーで得られた結果も、共通の尺度で比較しやすくなる。 

センチロイドスケールのカットオフ値は、研究目的や解析方法、対象集団、使用するPETトレーサーによって異なる場合がある。アミロイド陽性を示すセンチロイド値の閾値については複数の報告があり、30 CL前後を目安とする報告もある10)。ただし、カットオフ値は解析方法、対象集団、使用するPETトレーサーなどによって異なるため、臨床試験では試験計画書や採用する解析法に基づいて事前に定義することが重要である。 

このように、センチロイドスケールを用いることで、異なるアミロイドPETトレーサーや解析法から得られる定量値を共通の尺度で表現でき、施設や研究をまたいだ比較が容易になる11)。また、視覚評価を補完する客観的な定量指標として活用することができる。 

センチロイドスケールの求め方(撮像)

センチロイドスケールを算出するには、アミロイドPET画像に加え、解析方法によってはMRI画像やCT画像が必要となる。PET画像は、施設や装置、撮像条件によって測定値にばらつきが生じる可能性がある。そのため、多施設共同研究や臨床試験では、あらかじめ標準化された撮像条件を定め、各施設で一貫した撮像を行うことが重要である。 

たとえば、薬剤投与から撮像開始までの待機時間が変動すると、取得されるPET値に影響を及ぼすことがある12)。また、PET撮像後に行う画像再構成の条件によっても、センチロイドスケールの値に差が生じる可能性がある。 

したがって、正確で再現性の高いセンチロイド値を得るためには、解析方法だけでなく、撮像条件の標準化、施設トレーニング、撮像手順の確認、画像品質管理を試験全体で一貫して実施することが重要である。 

センチロイドスケールの求め方(解析)

センチロイドスケールの解析は、一般に以下のような手順で行われる。 

1. 画像の前処理 
ノイズの低減、必要に応じたフレーム画像の加算(平均化)、画像の位置合わせ、解剖学的標準化などを行い、被験者間で比較しやすい画像データを作成する。 

2. SUVr(Standardized Uptake Value Ratio)の取得 
標準化された関心領域(Volume of Interest:VOI)を画像上に設定し、SUVrを算出する。SUVは組織に放射性医薬品がどの程度集積したかを表す指標であり、SUVrは対象領域のSUVを参照領域のSUVで除した値である。標準Centiloid法では全小脳(whole cerebellum)が参照領域として用いられる。標準化されたVOIは、Global Alzheimer’s Association Interactive Network(GAAIN)のCentiloid Projectで提供されている13)。 

3. SUVrをセンチロイドスケールに変換 
算出したSUVrを、使用するアミロイドPETトレーサーに応じた校正式に基づいてセンチロイドスケールへ変換する。代表的なPETトレーサーとして、18F-Florbetapir、18F-Flutemetamol、18F-Florbetabenなどがあり、それぞれのトレーサーに対応した変換式が用いられる13)

まとめ

本稿で述べたように、正確なセンチロイドスケールを得るためには、撮像条件の標準化、画像品質管理、解析手順の統一、解析ソフトウェアの特性理解など、複数の点に注意する必要がある。これらを適切に管理することで、アミロイドPETの定量評価として、信頼性の高いセンチロイドスケールを活用することができる。 

近年、アルツハイマー病に対する疾患修飾薬が登場し、Aβ蓄積の評価はますます重要になっている。今後、センチロイドスケールは、臨床試験や臨床研究における客観的な評価指標として、さらに活用が広がることが期待される。 

参考文献

  1. 政府広報オンライン. “知っておきたい認知症の基本”. 
    https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html 
  2. 朝田 隆. “都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応” .
    H24Report_Part1.pdf 
  3. 二宮利治. “日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究”. 
    201405037A0001.pdf 
  4. U.S. Food and Drug Administration. July 6, 2023, FDA NEWS RELEASE. FDA Converts Novel Alzheimer’s Disease Treatment to Traditional Approval:  
    https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-converts-novel-alzheimers-disease-treatment-traditional-approval 
  5. 厚生労働省. 最適使用推進ガイドライン. レカネマブ(遺伝子組換え).
    https://www.pmda.go.jp/files/000265885.pdf
  6. 日本イーライリリー株式会社. N3pG Aβに対する遺伝子組換えモノクローナル抗体“ドナネマブ”の日本での承認申請が完了に関するプレスリリース.  
    https://news.lilly.co.jp/PDFFiles/2023/23-28_co.jp.pdf 
  7. エーザイ株式会社. “抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、日本において優先審査品目に指定”[ニュースリリース]. 
    https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202312.html  
  8. van Dyck CH, Swanson CJ, Aisen P, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2023;388(1):9–21.
  9. Klunk WE, Koeppe RA, Price JC, et al. The Centiloid project: standardizing quantitative amyloid plaque estimation by PET. Alzheimers Dement, 11, 1-15. 
  10. Fleisher AS, Chen K, Liu X, Roontiva A, et al. Using positron emission tomography and florbetapir F18 to image cortical amyloid in patients with mild cognitive impairment or dementia due to Alzheimer disease. Arch Neurol. 2011 Nov;68(11):1404-11. 
  11. 松田博史. アルツハイマー病におけるアミロイドおよびタウPETの現状. 臨床核医学2022 Vol.55 No.3. 
    臨床核医学 55巻3号(放射線診療研究会) | 医学文献検索サービス メディカルオンライン 
  12. 石井賢二. 認知症疾患の層別化のためのPET判定解析法の標準化.
    認知症性疾患の層別化のためのPET判定解析法の標化.pdf 
  13. Global Alzheimer’s Association Interactive Network. Centiloid Project. 
    Centiloid Project – The Global Alzheimer’s Association Interactive Network 

(公開日:2026.09.17)

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